散文

「目白(めじろ)」 2008年2月9日土曜日 

 子供の頃、みかん畑の杉垣の中にある桜の枝にゴム状のトリモチをグルグル巻きにし竹籠に美声の目白を入れ囮(おとり)にして付近へ置いた。 鳴き声に呼び寄せられた目白は、近くの枝まで来るも籠を見つけると警戒して近づかない。 籠の上に置いた輪切りのみかんをつつくだけで逃げる鳥もいてなかなか捕れない。 だが、油断していると肉食の百舌鳥が目白を襲(おそ)う。 農作業を仕舞う夕陽の沈むころには、籠の中に仲間が増えてバタバタとうるさかった。

 捕獲された鳥の餌の世話が大変だった。
小さなすり鉢に緑菜を刻み、時には糠(ぬか)、貝殻片、美声になるように蜂蜜などを混ぜて潰した後、水で薄めるのである。 留守の間、籠に入れて家の軒下へつるしておくとその声を聞きつけ蛇やら百舌鳥が襲う。
蛇の場合は、何も残さないが百舌鳥の場合は籠が転倒し羽が散乱するのですぐに判別出来た。

鳥の鳴き声大会開催を野鳥保護法の違法扱いで騒がしいが、大事に飼育している愛鳥家の集いを法で縛るのも野暮な話である。

玄関の山茶花垣から聞き覚えのある鳥の声がしきりに聞こえ来る。
この辺は大阪のビジネス街で車の往来も多く決して静かな環境ではないのだが目白の姿を多くみかける。 人で例えれば女性のソプラノという具合だろうか。
鳴き声を聞くと、ふと、あの頃、鮮やかだった桜の色、杉の匂い、澄み切った青空の青、暖かなみかん色、それと今はもう聞くことの出来ない家族のはしゃいだ声・・等々が、走馬灯の様に明るくせつなく胸に迫り来る。

 今、当地では珍しい程に大量のボタン雪が舞っている。
この雪の中、目白はどこでどうしているのか、野生にすれば余計なおせっかいだろうが少しばかり気にかかる。



(目白)(爪切り)(鳥の涙) (鳥の卵)

font:★Heart To Me★

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